【相続】平成30年相続法改正と特別受益

平成30年相続法改正の施行日

平成30年8月に民法の相続編(相続法)が約40年ぶりに大幅な改正となりました。改正相続法の施行日は以下のとおりです。

改正相続法の施行日

  • 原則 :2019年(令和元年)7月1日
  • 例外①:2019年(平成31年)1月13日 ➡ 自筆証書遺言の要件緩和
  • 例外②:2020年(令和2年)4月1日 ➡ 配偶者居住権
  • 例外③:2020年(令和2年)7月10日 ➡ 自筆証書遺言保管制度(予約受付は2020年7月1日)

この改正では、遺留分の算定における「特別受益」の取り扱いに重要な改正がありましたので解説いたします。

注意!

◆「特別受益」は具体的相続分の計算でも使いますが、こちらは旧法から変更はありません。具体的相続分の計算では相続人が生計の資本として受けたものである限り期間制限はないので注意が必要です。

◆相続人以外に対する生前贈与等は、相続法改正による変更はありません。

相続法改正の関連コラム

【相続】自筆証書遺言保管制度について教えてください

遺留分算定における特別受益は「死亡前10年」に限定

遺留分の基礎となる財産

遺留分の算定の際には、①被相続人が相続開始時に有していた財産の価額に、②生前贈与等された財産の価額を加え、そこから債務を差し引いて算定生前贈与等の価格を遺産であるとみなして計算を行います。

遺留分の基礎となる財産(計算式)

=①相続開始時の財産価額+②生前贈与等された財産(※)の価額-③相続債務額

※生前贈与等された財産

  1. 相続開始前10年以内の特別受益にあたる財産(2019年相続法改正)
  2. 相続開始前1年以内の相続人以外に対する生前贈与など
  3. 遺留分を侵害することを知って行われた生前贈与など

旧相続法の規律

旧法では遺留分算定における特別受益の取り扱いに関して明確な規定がありませんでした。

もっとも、判例によって、特別受益となる贈与(相続人が生計の資本として贈与を受けた贈与)は、期間の制限を受けないとされていました(最判平成10年3月24日民集52巻2号433頁)。

つまり、改正法施行前である2019年7月1日より前に開始した相続では、相続人が被相続人から生計の資本として便益を受けた場合には、大昔まで遡って計算をしなければならなかったのです。

改正相続法の規律

改正相続法では、遺留分算定の基礎となる財産としての特別受益は、相続開始前10年以内のものに限定することとしました。

ただし、生前贈与の時点において、遺留分侵害者が、他の相続人の遺留分を侵害することを知っていた場合には、10年以上前の生前贈与でも遺留分の計算に含まれます。

具体的相続分の算定は旧法から変更なし

以上は、あくまで「遺留分」を算定する際のものです。

「特別受益」は、具体的相続分の計算でも使用しますが、具体的相続分の計算については、旧法から変更はありません。したがって、具体的相続分の計算では、相続人が生計の資本として贈与を受けた贈与は、期間制限を受けません。

みなし相続財産(計算式)

=①相続開始時の財産価額+②特別受益財産の価額-③寄与分額-④相続債務額

この結果、遺留分の計算と具体的相続分の計算で、算入される生前贈与の範囲が異なることがある、ということになりましたので、十分注意する必要があります。

Tips 遺留分と具体的相続分の計算で「特別受益」の取り扱いが違うのはなぜ?

相続財産の分配(具体的相続分の計算)は、相続開始時点の財産(遺産)の分配に関するものであり、仮に多額の特別受益があったとしても、遺産として現に残っている金額を超えて支払う必要はありません。

これに対して、遺留分侵害額請求権は、遺産で足りなければ、生前贈与を受けた本人の財産から支払わなければなりません。しかしながら、生前贈与から長い時間が経過しているケースでは、生前贈与を受けた相続人もその財産を費消していることもあり、場合によっては、相続を契機として多額の負債を抱えることになりかねません。

遺留分侵害額請求では、個人資産で支払わなければならないため、あまり古い生前贈与に適用するのは酷なケースも多いことから、計算に算入する期間に差を設けたのだと考えられます。

遺留分・相続分のことならACLOGOSにお任せください。

沖縄県那覇市の法律事務所、弁護士法人アクロゴスでは、遺留分減殺(侵害額)請求、遺言無効、遺産分割調停など多数の相続事件を取り扱っております。

沖縄で相続にお悩みの方は、ご相談ください。

ご相談無料(初回) 098-996-4183