概要
本件は、沖縄県宜野湾市に団地を所有する地主様からのご依頼でした。
本人の希望は、「管理負担が大きく、契約期間途中だが、借地を終了させたい」
また、借地が終了できない場合には、「賃料を増額したい」とのご希望でした。
背景事情としては、地主様が高齢になってきて管理負担が大きくなっていることや、将来の相続を考えたときに、借地を少しでも整理しておきたいとのことでした。
借地の存続期間
よく、「土地は人に貸すと」返って来ない。という言葉を聞いたりもします。
本来、借地契約も「契約」なので、契約自由の原則によって、自由に借地契約の内容を決めることが出来るはずです。しかし、「建物所有目的」での土地の利用は、借主の生活の本拠になったり、投資をして事業をしたり、その利用者に密接にかかわることから、建物保護法、借地法を経て、現在(平成4年8月1日以降)は借地借家法が、契約自由を大きく制限しています。
したがって、借地契約の期間を定めなかったり、借地契約の最低年数(30年)を下回る契約の場合は、旧借地法(堅固建物)であれば60年、借地借家法であれば30年の契約とみなされますし、契約で30年以上の年数を定めても、無条件・一方的に期間満了と同時に契約を終了させるということは出来ず、借地を終了させる(更新しない)「正当事由」が必要になります。
本件は、契約期間中でのご依頼でしたので、そもそも法律的には契約解除ができる局面ではなく、解除はあくまで借地人との合意が必要な事案でした。
示談交渉
借地の権利関係は、法律上借地人が有利な立場にありますから、まずは借地人への意見照会を行ったうえで、借地の解消(合意解除)に応じる余地のある借地人との個別交渉を行い、応じない賃借人に対しては賃料増額が基本的な方針となります。
本件では、多数の借地人がいる関係上、まず一斉に、契約を解除したい旨を告知する文書を送付いたしました。併せて、期限を定めて、指定した期限までに合意解除に応じる方については、優遇した補償をお支払いすることも告知いたしました。
これに対しては、住み続けたいという方、応じる方向で検討する方、積極的な値段交渉を仕掛けてくる方など様々でしたので、まずは交渉の便宜のため「賃料が増額されても住み続けたい」方については、グループ化を促し、それ以外の方については、個別に、借地人の要望と地主サイドの考え方のすり合わせを行いました。
賃料増額・合意解除
以上の方針に則った交渉の結果。
- 借地料30%増額
- 1/5の借地人について合意解除
となりました。
そもそも、契約期間中ですので、一方的解除は出来ないため、場合によっては、賃料増額のみとなる可能性も考えておりました。
しかしながら、結果的には、一定数の借地人から解除の同意を頂くことができました。中には、当初、極めて高額の補償を求める方もおりましたが、借地権の価格の計算根拠、建物の老朽化、解体取壊し費用などの説明の結果、当方の提示案に同意いただくことが出来た方もおりました。
また、借地料の増額についても、調停・訴訟となると、地主・借地人双方にとって負担が大きいため、借地人グループと早い段階で金額合意をすることが出来た点でも、非常に円滑に進めることが出来ました。
借地借家の問題は、身近なようで、あるいは、インターネット情報でも何でもわかるようで、実は、貸主サイドでは「60年あるいは30年経てば簡単に契約が解除できる」と考えていたり、逆に、借主サイドでも「高額の立退料がもらえるはずだ」と考えているなど、不正確な認識をしているケースが非常に多くあります。
大事なことは、どこまでが契約(当事者の合意・話し合い)の領域で、どこまでが法律で定められた領域なのかを理解して交渉に臨むことです。
借地・賃料増額の問題にお困りの方はご相談ください