はじめに
通知書、請求書、催告書、督促状などの郵便物が届いたとき、その封筒に「内容証明」と書かれていることがあります。
この「内容証明」と書かれた封筒が届いたら要注意です。
弁護士からの内容証明郵便=法的な主張が含まれている
内容証明郵便とは?
内容証明郵便とは、送った郵便物について郵便局が控え(謄本)を作成し、郵便局と差出人双方が保管するという制度です。郵便局での保管期間は5年間ですが、差出人にも控えが交付されるため、差出人が紛失しない限り残存します。
つまり、郵便物が届いたかどうかだけではなくその「内容」を証明することができるという点が特徴です。また、この郵便は必ず一般書留で送ることになるので、配達記録(いつ受け取ったか)も記録に残ることになります。
弁護士が内容証明郵便を送る意味
内容証明郵便を送るのは、「こういう内容の文書を送った。」ということを明確に記録に残したいときに使われます。
単に、相手方の心情に訴えかけたいだけであったり、交渉をしたいだけであれば、書留郵便でも問題ないはずですが、あえて「内容証明郵便」を使うのは、その郵便によって相手方に示された意思や事実の通知に「法的効果」が付与されているからです。
法律の世界では、相手方に対する「意思表示」、例えば、「契約を解除する」という場合や、一定の事実の通知に法律上効果が与えられている場合、例えば、「裁判外の請求」により時効の完成が6か月猶予される場合があります。
※ちなみに、後者は「意思の通知」とか「観念の通知」といい、これらを総括して「準法律行為」といいます。
したがって、弁護士が内容証明郵便で通知をするのは、それが何らかの「法律的な効果」が含まれている可能性が非常に高いと言えます。
自分で対応する「時間・労力」と「リスク」をよく考えましょう
内容証明郵便は、一定の「法律的な主張」あるいは「法律的な効果」を狙ったものです。しかしながら、その文書に表示された「意思表示」あるいは「通知」にどのような法律的な意味があるのかを判断することは、非常に難しい問題です。
例えば、「賃料増額の意思表示」あるいは「賃料減額の意思表示」が内容証明郵便で送られてきたものの、それを拒絶した場合、どういった影響が発生するかを例にとって考えてみましょう。
内容証明から派生する法的課題の具体例 賃料増減額の通知の場合
手続面での課題
まず、賃料増減額の意思表示があっても、実際には、その後「賃料増減額の調停」を行い、そこでも合意が出来なければ「賃料増減額の訴訟」で最終的には金額の決着がつくことになります。
では、賃料増減額の「効果」はいつの時点で発生するのでしょうか?裁判で最終的に決着したときでしょうか?いいえ違います。最初に賃料増減額の「通知」をした時点です。
また、賃料増減額の通知が行われた場合、借主は一体いくらの賃料・地代を支払えばよいのでしょうか?もちろん「法外な請求だから払わなくていい」ということにはなりません。結論として増減するかどうかはともかく何らかの賃料を支払わなければ、今度は「賃料滞納により解除する」と言われてしまいます。この場合には、借地借家法32条によって、借主が「相当と認める額」を支払う必要がありますが、この「相当と認める額」とは何でしょうか。
「相当と認める額」は、契約解除にはならないという意味では、(特別な事情がない限り)取りあえず従前の賃料を支払っていればよいと言えます。しかし、仮に裁判で決着がついた場合には、賃料増減額の「通知」をした時点から差額に対して年利10%という高額の遅延損害金が付与されることになることはご存知でしょうか。
したがって、「ある程度の増額が避けられないけれど、増額幅の主張に開きがある」というケースであれば、最初から多少上乗せして払ってしまった方が結果的には得になるという可能性もあります。ただし、他方で、調停や和解で終了する場合には、遅延損害金がカットされるケースも多く、どちらが得かという見極めは簡単ではありません。
更に、貸主が受取りを拒絶した場合どうするか、これは「供託」という手段があります。供託とは債権者が債務の履行を受け取らない場合やそもそも債権者が誰かが不明であるような場合、法務局に預託することで、債務を履行したとみなす制度です。ただ、ここでも、「供託を行う際に名目を何と書けばいいのか」、「遅延損害金相当額もあわせて供託する必要があるのか」など面倒な問題が発生します。
「本題」にも法律的な論点はたくさんある
手続的な問題はインターネット上で調べれば出てくることも多いでしょうが、自力でそこまでたどり着き、実行をするとすれば自分の「時間と労力」を大幅につぎ込むことになります。
しかもそうやって調べてやってみても、それが間違っていて、いざ調停や裁判の場では法的な効力が認められないという「リスク」を抱えたり、あるいは、「間違っているかもしれない」という「不安」を抱え続けてその後の手続きに挑むことになります。
しかも、ここまで述べたことは、「賃料増減額が適正かどうか」という本来の問題とは異なる周辺的な事柄です。本来の問題でしかありません。そして、「賃料増減額が適正かどうか」という観点でも、そもそも賃料相場がどれくらいかという話しから始まり、前回契約時の前提条件がどの様なものか、借り始めてからどれくらいの期間が経っているのかなど、さまざまな事情が影響することになります。
本来、賃料増減額で労力を注ぐべき対象は、契約時点や前回賃料変更時の経緯や契約内容、契約時の説明内容ですが、手続的な部分に気を取られていては、こうした問題について十分に検討することができません。結果として、調停委員や裁判官に言いたいことが上手く伝わらず不利な判断を受けるという「リスク」をも抱えることになります。
内容証明への対応は「時間が勝負」になることも
法律上の意思表示や通知には、期間が設定されているものが非常に多くあります。
例えば、履行期限を過ぎた債務について解除を前提とした催告をした場合であれば数日放置してしまえば、法律上も契約解除権が発生します。
内容証明郵便は、こうした期間制限が付いた法律上の効果の発生を狙ったものである可能性が高く、その法律上の期間を経過すると権利や防御方法を失いかねないため、内容証明郵便への対応は、「時間が勝負」を分けかねないのです。
この意味でも、早期の弁護士の関与が重要になってきます。
まずは弁護士に確認を
内容証明郵便は、相手方からの宣戦布告ののろしです。
法的な紛争に対処するためには、その最終的な解決手段である裁判手続とその結論の見通し両方について、十分な知識・経験がなければなりません。したがって、内容証明郵便が送られてきたとき、その問題が「自分自身で対応できる問題なのか」それとも「弁護士が対処した方がいい問題なのか」は、実務経験を十分に積んだ弁護士にしか判断できない領域です。
したがって、内容証明郵便が届いたら、すぐに弁護士のところに法律相談に行く必要があります。この際、弁護士会の法律相談や法テラスの法律相談もありますが、予約から相談までのタイムロスも考えられ、しかも相談担当者が弁護士なり立てということもあり得ます。
内容証明郵便が届いたら、ご相談ください。
弁護士法人ACLOGOSは、実務経験豊富な弁護士とスタッフが、あなたの権利を守り、適切な法的対応をするために、ベストを尽くします。
沖縄県で内容証明郵便の送付を受けた方は、ぜひ一度ご相談ください。