瓦版ACLOGOS(5)

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令和6年4月26日に最高裁判所において、職種や業務内容の限定された労働者に対し、労働者の同意を得ないまま行われた配転命令を有効とした原審を破棄し、差し戻した判決がありました。

当該判決によれば、次のような事案です。

【事件の概要】

地方公共団体から、福祉用具について、その展示及び普及、利用者からの相談に基づく改造及び製作並びに技術の開発等の業務を指定管理者等として行っていたA財団法人からその権利義務を承継したYが当該業務を行っていたところ、Xは、A財団法人に、福祉用具センターにおける上記の改造及び製作並びに技術の開発に係る技術職として雇用されて以降、上記技術職として勤務していたもので、XとYとの間には、Xの職種及び業務内容を上記技術職に限定する旨の合意があったが、Yは、Xに対し、その同意を得ることなく、総務課施設管理担当への配置転換を命じた。

【原審大阪高裁判決】

本件配転命令は配置転換命令権の濫用に当たらず、違法であるとはいえないと判断し、本件損害賠償請求を棄却した。

【本件最高裁判決の要旨】

労働者と使用者との間に当該労働者の職種や業務内容を特定のものに限定する旨の合意がある場合には、使用者は、当該労働者に対し、その個別的同意なしに当該合意に反する配置転換を命ずる権限を有しないと解される。

YがXに対してその同意を得ることなくした本件配転命令につき、Yが本件配転命令をする権限を有していたことを前提として、その濫用に当たらないとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

【コメント】

労働契約法7条は、その本文において、「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。」と定めています。従って、原則として就業規則に配転の定めがあれば、使用者は労働者の同意がなくとも配転させることができることになります。

しかし、同条はそのただし書において、「労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。」と定めています。

従って、就業規則で配転についての定めがあったとしても、個別の労働契約において職種や勤務地の限定がなされている場合においては、個別の契約の方が優先され、使用者は労働者の同意なくして配転命令や転勤命令を出すことはできないことになります。

本件判決は、このような労働契約法の定めに従って常識的な判断をしたものと言えます。

もっとも、そのような職種が限定されている労働契約において、当該職種に係る業務を廃止したり、あるいは経済的な理由から人員を整理しなければならなくなったときに、雇用継続の観点から労働者の同意なく配転を命ずる業務命令がどのような効力を有するのかは、整理解雇法理の観点からの考察が必要になりそうです。また、このような配転に労働者が同意したとしても、それが自由意思によるものかどうかの検討も必要になるでしょう。

以 上