同一労働同一賃金!!⑬ 【扶養手当】に関する最高裁の判例が示されました。

令和2年10月21日

【扶養手当】に関する最高裁の判例が示されました。

弁護士法人ACLOGOS

弁護士 竹 下 勇 夫

日本郵便(大阪)事件最高裁判決によって、扶養手当(家族手当)に関する待遇差についての判断が示されました。

これまで扶養手当については、家族手当が無期契約労働者の職務内容等に対応して設定された手当と認めることは困難で、配偶者及び扶養家族がいることにより生活費が増加することは有期雇用労働者であっても変わりがないから不合理とする井関松山造船所事件高松高裁判決と、扶養手当は長期雇用を前提として基本給を補完する生活手当としての性質、趣旨を有するものであるのに対し、契約社員は原則として短期雇用を前提とし、賃金も年功的体系は採用されておらず、基本的には従事する業務の内容や就業する場所等に応じて定められているのであるから、長期雇用を前提とする基本給の補完といった扶養手当の性質及び支給の趣旨に沿わないとして、不合理とは認められないとする日本郵便(大阪)事件の原審である大阪高裁判決とに判断が分かれており、厚労省の指針でもこの点に関する言及がないため、最高裁の判断が待たれていました。

 今般、最高裁は上記大阪高裁の判断を否定して、次のように述べ、正社員と契約社員との扶養手当に関する待遇差は不合理であるとしました。

正社員に対して扶養手当が支給されているのは、上記正社員が長期にわたり継続して勤務することが期待されることから、その生活保障や福利厚生を図り、扶養親族のある者の生活設計等を容易にさせることを通じて、その継続的な雇用を確保するという目的によるものと考えられること、この目的に照らせば、本件契約社員についても、扶養親族があり、かつ、相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば、扶養手当を支給することとした趣旨は妥当するというべきであるとして、両者の間に扶養手当に係る労働条件の相違があることは、不合理であると評価することができるものというべきである。

そして、本件の契約社員は、有期労働契約の更新を繰り返して勤務する者が存するなど、相応に継続的な勤務が見込まれているといえる、としました。そのうえで、待遇差の不合理性の考慮要素である、①職務の内容、②職務の内容及び配置の変更の範囲、③その他の事情、について相応の相違があることを認めたうえで、それでも正社員であるに対し、扶養親族の状況に応じて扶養手当を支給しているが、契約社員に対しては、扶養手当を支給していない、という待遇差を不合理としました。

その理由は、本件契約社員が相応の継続的な勤務を見込まれるとした点にあり、そうであれば正社員に扶養手当を支給する目的がこのような継続的に勤務することが見込まれる契約社員にも妥当するのであるから、本件の様な待遇差は不合理としたものです。実際、多くの契約社員が郵便事業会社設立以前に国や日本郵政公社に有期任用公務員として認容された方で、そうでない方も更新が繰り返され相当長期の雇用が継続しているという事情がありました。

したがって、「継続的な勤務が見込まれない」と判断される契約社員について、本件と同様の結論になるかどうかについては不明です。本件はあくまでも事例判断であり、この点は注意を要するところです。

           (続)