副業・兼業ガイドライン 6

副業・兼業ガイドライン その6(労働時間の通算)

                             2020.09.10

 

 当社の運営するA事業場で所定労働時間6時間で稼働している従業員が、使用者の異なるB事業場で所定労働時間2時間で副業をしています。A事業場で適用されている36協定は、年間360時間の時間外労働を許容しています。7月、8月はお中元の時期で仕事が立て込んでおり、7月、8月の平均時間外労働時間が80時間ぎりぎりになりそうです。この場合、副業先のB事業場でも時間外労働があれば、時間外労働を通算すると80時間を超えてしまいそうです。どうすればよいのでしょうか?

 

すでに述べたように、1か月100時間未満、複数月平均80時間以内の要件は労働者個人の時間外労働に関するものですから、同一人の複数の事業場での時間外労働時間は通算されることになります。従って、A事業場とB事業場の2か月間の平均時間外労働時間が80時間を超える場合は違法となります。

そこで、副業をしている従業員がいる場合、事業主は他の事業場での実際の労働時間を把握していないと、違法な時間外労働をさせてしまうことになりかねません。

そこで、ガイドラインは、自らの事業場における所定外労働時間と他の使用者の事業場における所定外労働時間とを当該所定外労働が行われる順に通算して、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分の有無を確認する、とし、所定外労働時間の把握については、労働者からの申告等により把握する、としています。そして、その方法については、毎日申告させる必要はなく、必要な頻度で把握すれば足りる、として、具体的には

〇 一定の日数分をまとめて申告等させる

〇 所定労働時間どおり労働した場合には申告等は求めず、実労働時間が所定労働時間どおりではなかった場合のみ申告等させる

〇 時間外労働の上限規制の水準に近づいてきた場合に申告等させる

 

という例をあげています。もっとも三番目の例は「上限規制の水準に近づいてきた」かどうかの判断を労働者にゆだねることになりかねないので、妥当ではないように思います。