【改正民法】保証③ 保証意思宣明公正証書

改正民法の施行は2020年4月1日

民法の大幅な改正が2020年4月1日から施行(効力が発行)します。

中でも、保証契約は、日常的にも多く使われる契約類型であり、なおかつ、今回の改正でルールが大きく変わりましたので、実務的な影響が最も大きな部分だと思います。

保証意思宣明公正証書

改正の趣旨

保証意思宣明公正証書とは、保証人になろうとする者の保証意思が明確に認められることを、公正証書をもって確認するという手続きです。この公正証書の意義については、公証人役場のホームページでは以下のように解説されています。

これまで、保証人になろうとする者が、保証人になることの意味やそのリスク、具体的な主債務の内容等について十分に理解しないまま、情義に基づいて安易に保証契約を締結してしまい、その結果として生活の破綻に追い込まれるというようなことがあると指摘されてきました。

そこで、今回の民法改正により、事業用融資の保証契約については、その締結日の前1か月以内に、公証人があらかじめ保証人になろうとする者から直接その保証意思を確認して公正証書(保証意思宣明公正証書)を作成しなければ、効力を生じないとする規定が新設されたものです。

日本公証人連合会HP(http://www.koshonin.gr.jp/business/b03_2)より引用

要件のチェック

保証意思宣明公正証書が必要な保証契約は次の通りです。
  • 事業用融資の保証契約であること
  • 保証人が個人であること
事業用のために負担した貸金等債務とは?

貸金等債務は、条文上「金銭の貸渡や手形の割引等によって負担する債務」とされており、法形式に関わらず、金銭の融通を目的とした取引によって生じた債務を指すものと考えられます。

保証会社による求償債権に対する保証は含まれますか?

保証人がある債務を保証した場合に、主債務者が支払えなくなった際、保証人が代わりに支払いますが、この場合保証人は、主債務者に対して、自らが肩代わりした債務を請求することが出来ます(求償権と言います。)。

このように、事業用融資にかかる求償債権について(連帯)保証をした場合もここでいう「事業用融資」に含まれるので、注意が必要です。

例外要件

事業用融資に対する個人保証であっても、以下に該当する人物が保証人になる場合には、保証契約のリスクを十分に理解していると考えられることから、公正証書は不要です。

  • 主債務者が法人である場合で、その法人の理事・取締役等又は過半数の議決権を保有する者
  • 主債務者が個人である場合で、その共同事業者である者
  • 主債務者が個人である場合で、主債務者たる事業者の配偶者で、かつ、現にその事業に従事している者

作成手続き

主債務者から以下の情報提供を受ける(コラム:【改正民法】保証① 保証人への情報提供義務

    1. 主債務者の財産及び収支の状況
    2. 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
    3. 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容

※保証意思宣明公正証書の要件は、主債務者から保証人に対する情報提供義務が必要な場合に該当します。この情報提供義務を怠ると、保証契約を取り消される可能性があります。

融資契約の日の前1か月以内の日付で、公証役場に電話・メール等により連絡をとり、必要書類を送付のうえで、保証意思宣明公正証書の作成手続をする日時を決める。

【必要書類の一覧】

1.印鑑登録証明書(証書作成日の前3か月以内に発行のもの)及び実印、もしくは、〈運転免許証、パスポート等の顔写真入りの公的機関発行の身分証明書〉のいずれか1つ及び認印
2.保証意思宣明書
3.予定された貸付契約書、保証契約書(根保証の場合は、根保証契約書と被保証債務を示す契約書)

※ 保証委託契約による求償債務の保証の場合は保証委託契約書も必要

4.主債務者から提供を受けた主債務者の財産状況等の情報の書面

③予約した日に保証人本人が公証人役場に出頭し(代理人不可)、手数料を納める(1通につき11,000円、4枚を超える場合は1枚につき250円加算)

④公証人への口授等意思確認の手続きを行い、公正証書に署名・押印を行う。

義務違反の効果

保証契約は効力を生じません(無効)

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