【改正民法】保証② 個人根保証(家賃保証・身元保証)

改正民法の施行は2020年4月1日

民法の大幅な改正が2020年4月1日から施行(効力が発行)します。

中でも、保証契約は、日常的にも多く使われる契約類型であり、なおかつ、今回の改正でルールが大きく変わりましたので、実務的な影響が最も大きな部分だと思います。

極度額を定めなければ「無効」

要件のチェック

・個人による根保証(不特定の債務を主債務とする保証)であること

※極度額の定めは、事業用の貸金、貸金等債務などに限定されない、いわば「個人根保証の共通ルール」である点に注意が必要です

義務の内容

書面により極度額を定めること

違反の効果

根保証契約が効力を生じない(無効)

上限には明確な規制がない

本改正では、極度額を定めることが義務付けられましたが、他方で、その極度額の上限は決まっていません。

どういった立場の人物がで、どの様な契約の保証をするかによって上限額は変わるので一概には言えませんが、余りにも高額な上限(極度額)の定めは、場合によっては、公序良俗などの観点から制限されるものと考えます。

不動産事業者向けアンケートでは家賃保証は「2年分」

家賃保証について言えば、賃料債務の消滅時効期間は5年間ですが、全国賃貸不動産管理業協会によるアンケートでは、「賃料の2年分」という回答が最も多かったとのことです。私見としても、保証人の立場を考えたとき、2年分程度が穏当であろうと考えます。

元本確定事由の定め

元本確定とは?

根保証など一定の範囲に属する不特定の債務を担保する類型の契約(根保証、根抵当、根質、根譲渡担保など)では、いつまでたっても不確定な債務を担保し続けるとなると、保証人等にとっても法律関係が不確定ですし、債権者からしてもどうやって執行していいのか分かりません。

そのため、この様な契約では、一定の時点において、債務額を確定するという制度になっています。これを、元本確定といいます。

今回の民法改正では、個人根保証契約について、「貸金等債権の根保証」と「貸金等債権以外の根保証」に分けて元本確定事由が定められました

「貸金等債権以外の根保証」における元本確定事由

元本確定事由

貸金等債権以外の根保証の場合の元本確定事由は以下のとおりです。

  • 保証人への強制執行・担保権実行申立
  • 保証人の破産手続開始決定
  • 主債務者又は保証人の死亡
どうして主債務者への差押え・破産が元本確定事由ではないのか

保証人はあくまで主債務者の債務を担保するという立場ですので、主債務者の信用状況が悪化が顕著であったり、返済が不能になった場合でも、保証人が債務を負担しつづけるというのは酷である様にも思います。

この点は、改正民法の審議で、個人根保証について、家賃保証を念頭に置いていたことが影響しているようです。

すなわち、破産手続きに至る場合、家主が契約の解除を制限されることがあります。そのような場合、家賃保証の元本が確定してしまい、保証がないのに貸し続けなければならないというのは、むしろ家主に酷です。

この様な考慮から、強制執行・破産手続き開始が元本確定事由から除外された様です。

貸金等債権の根保証における元本確定事由

「貸金等」とは何ですか?

条文上、「金銭の貸渡しや手形の割引等により生じた債務」とされています。

物品の利用・購入を目的とした取引ではなく、金銭の融通自体を目的とした取引から発生した債権のことを指すものと考えます(ややこしくしてしまう気もしますが、手形割引は法形式としては「売買」ですが、譲渡人が遡及義務を負担する場合には実質的には貸金です。)。

したがって、債権買取(ファクタリング)によって発生した債務も買戻特約付きの場合には規制対象ということです。

なお、話は逸れますが、買戻特約を付したり、債権回収を売主に行わせる形態(類似のものを含む)のファクタリングで、高額の手数料を得ている場合は、実質的にはヤミ金の可能性が高いとして、金融庁から注意が出されております(実際に、沖縄県でもこの手法のファクタリングを行っている業者が存在します)。

インターネット上では、契約の具体的内容も考えずに、ファクタリングには貸金業法の規制がないとか、利息制限法の適用がないなどという情報が出回っており、非常に危険です。

https://www.fsa.go.jp/receipt/soudansitu/advice04.html

元本確定事由
  • 保証人への強制執行・担保権実行申立
  • 保証人の破産手続開始決定
  • 主債務者又は保証人の死亡
  • 主債務者への強制執行・担保権実行申立
  • 主債務者の破産手続開始決定
  • 5年以内の元本確定期日を定めた場合はその期日の到来
  • 5年以上の元本確定期日を定めたか、元本確定期日を定めなかった場合は契約締結日から3年経過した日の到来
貸金等根保証ではない場合との違いは?
主債務者の信用状況悪化が元本確定事由になります。

貸金等根保証の場合、家賃保証のような場合とは異なり、債務に「物品の利用の対価」という性質が含まれません。

物品の利用の対価の場合は、信用状況が悪化していても借り続けざるを得ない局面が存在することから元本確定事由としていませんが、貸金などの単純な金銭の融通の場合には、主債務者の信用状況が悪化しているにもかかわらず、それでもなお借り続けた(貸し続けた)債務まで保証させるのは、妥当ではありません。

したがって、強制執行等や破産手続開始など主債務者の信用状況が悪化した場合には、元本を確定させることとしています。

元本確定期日の規制

貸金等根保証の場合では、物品の利用の対価という性質はなく、また、債務の発生も不定期・高額になる可能性もあります。

この様な債務を、個人が余りに長期間にわたって借金の保証をするということは好ましくないという判断から、元本確定に時間的な制限を設けています。

※これに対して、貸金等以外の賃貸借や身元保証では、性質上、長期間にわたりやすく、また、発生する債務も安定しているか、発生可能性がそれほど高くないため、時間的な制約は設けていないものと思われます。

元本確定期日の規制の内容は以下の3つです。

  • 契約締結から5年以内の元本確定期日を定めた場合(変更を含む)には、契約で定めた期日に元本が確定する
  • 契約締結から5年を超えた日を元本確定期日とした場合(変更後の期日が契約締結時から5年を経過する場合を含む)は、その元本確定期日の定めは無効(=元本確定期日の定めがないものとみなす)
  • 元本確定期日の定めがない場合は、契約締結の日から3年を経過した日に元本が確定する
元本確定期日の変更

元本確定期日は変更可能ですが、5年を超える元本確定期日は定めることができないという、「5年ルール」は元本確定期日の変更の場合にも適用されます。

簡単に言えば、新規でも変更でも、「契約時から5年を超える根保証契約は出来ない」ということです。

なお、再契約は可能と考えられますが、その場合には、合意解約をするか、あるいは、一旦元本確定をして必要があれば清算を行うべきす。

また、再契約の際に、再契約以前の債務をも保証させるような契約をした場合には、実質的に5年ルールを破るものとして、無効等となる可能性があると考えます。

まとめ

個人根保証では、極度額規制という「共通ルール」と元本確定事由という「個別ルール」がありますので、混同しないようにご留意ください。

家賃保証・身元保証契約の契約書チェックのご要望がございましたら、お気軽にご相談ください。

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