概 要
本件は、妻及び妻の子のグループと前妻の子のグループで対立が発生した事案です。
被相続人は資産家であり、以下のような財産が有りました。
- 事業用土地、賃貸土地建物、農地、市街化調整区域内の土地、一般の宅地、収用予定地
- 非上場株式、投資信託、生命保険、普通・定期預金
- 未払給与、貸金庫内の現金、税金の還付金
更に、特別受益、寄与分の主張、相続税の立替払いなどもあるという、いわば相続のフルコースの事案です。
依頼者様としては、遺言はないものの、生前、被相続人が希望した分け方があり、出来る限りそれに近づけるように分けたいとの希望がありました。
受任後の対応(財産の調査・査定)
相続では、まず遺産を構成する財産の評価額がいくらなのか、大体の目安をつけなければなりません。
例えば、法定相続分が1/2だとしても、不動産の価値が1000万円と500万円とでは全く話が違ってきてしまうからです。
一般の宅地などでは、固定資産評価額や相続税評価額(路線価)を割り戻す(一般的には固定資産評価額は時価の70%程度、相続税評価額(路線価)は時価の80%程度と言われています。)ことで、大まかな価格を把握することが可能です。
しかしながら、事業用の土地であったり、市街化調整区域など建築制限があったりする場合には、固定資産評価額などをそのまま信用することは出来ません。本件では、様々な種類の不動産がありましたので、まずは不動産業者に対して、査定をお願いしました。
これにより、大まかな遺産全体のボリュームが5億円程度と分かり、また、被相続人が希望した分け方で分けるとなると、代償金の発生が見込まれました。
特別受益・寄与分の整理
本件の特別受益には以下のようなものがありました。
- 相手方が受け取りを認めている現金
- 孫に対する不動産の贈与
- 親からの資金援助で取得したと思われる不動産
- 遺産である賃貸不動産の賃料
また、寄与分としては以下のようなものがありました。
- 妻名義の軍用地の軍用地料
- 妻名義の軍用地料で購入したと思われる不動産
特別受益や寄与分については、相手方が認めていたり、はっきりした証拠がある場合には計算の前提としますが、証拠が弱いものや遺産分割審判にて裁判所が判断する場合に、どちらに転ぶか分からないものについては、依頼者様にリスクを説明したうえで、どの様な提案をするか検討していただきます。
本件は、妻から被相続人に対する寄与分については特に証拠らしい証拠はなく、また、依頼者様としても、被相続人が生前伝えていた分け方での分割を希望しており、計算上、妻の寄与分を算定しなくとも概ね希望した分け方を実現できることが分かりました。
そこで、依頼者様のご意見もふまえて、妻の寄与分については相手方が検討するに際して配慮を求めつつも、具体的な遺産分割の計算上は譲歩するという形で、調停段階では、あえて、深入りして争点にはしませんでした。
事案の結末(初回期日から6か月での調停成立)
以上のような財産の調査、特別受益、寄与分の計算と主張にあたっての取捨選択を行った結果、概ね、被相続人の希望した分割方法に則って、双方が受け入れられる分割方法を定めることができました。
しかも、財産総額5億円以上でなおかつ、多数の種類の不動産、特別受益、寄与分の主張まであった事案にも関わらず、調停申立てから8か月(初回期日から6か月)で調停することが出来ました。
よく、遺産分割調停と聞くと「すごく時間がかかる」と思い込んで、忌避される方もいらっしゃいます。しかしながら、この事案は、調停を申し立てるまで、当事者間で検討していた期間が非常に長く、被相続人の死亡からは3年以上が経過しておりました。
この様に、調停が始まってしまえば着実に物事は動いていきますので、調停申立て前に当事者間で話し合っている時間の方が長くなってしまうことの方が多いと考えております。また、代理人をつけて対応すれば心理的な負担も非常に軽く済むという点も依頼者様にとって大きなメリットだと考えております。
財産の種類が増えれば増えるほど、財産の規模が大きければ大きいほど事案は複雑になり、専門的な知識が必要となります。当事者間で何度か話し合っても、具体的・現実的な方向性が見えてこない場合には、是非、一度ご相談ください。
相続でのご相談は弁護士法人ACLOGOSまで
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初回相談は無料となっておりますので、遺産分割についてお困りの方は、是非、ご相談ください。