令和3年の民法等の改正(14)

令和3年の民法等の改正(14)

~遺産分割の見直し③~

次に、期間経過後の遺産の分割における相続分に関して、第904条の3の規定が新設されました。遺産分割の促進を図ることを目的とした条文で、今回の相続法の改正では最も重要な改正のひとつと思われます。

改正第904条の3は、特別受益に関する第903条、第904条及び寄与分に関する第904条の2の規定は、原則として、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない、としています。

民法第903条第1項によれば、共同相続人の中に被相続人から生前に贈与を受けたり遺言によって財産をもらった(遺贈)りした(これを「特別受益」といいます。)者がある場合には、この特別受益のうち贈与の価額を相続財産の価額に加えたものを相続財産とみなし、法定相続分・指定相続分により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をその者の相続分(これを「具体的相続分」といいます。)とすることとしています。また民法第904条の2は、共同相続人の中に、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、法定相続分・指定相続分に寄与分を加えたものをその者の相続分(具体的相続分)とする、としています。

遺産分割においては、特別受益や寄与分を参酌した具体的相続分を基準として行うことになりますが、相続開始後10年を経過したときは、原則として法定相続分・指定相続分に従って分割しなければならないとされたのです。

生前贈与や遺贈を受けていない相続人は、これを受けている相続人よりも具体的相続分を基準とすれば有利になりますし、主張できなくなれば不利になります。寄与分についても同様のことがいえます。このようにして、特別受益や寄与分を主張ができなくなって不利益になる者が、相続開始後10年以内に遺産分割を行なうことによって遺産分割を促進し、遺産共有のままほったらかしになる事態を防ごうとの趣旨からこのような規定が新設されました。      —続—

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