令和3年の民法等の改正(6)

令和3年の民法等の改正(6)

~共有制度の見直し②~

次いで、共有物の変更に関する民法第251条を改正して、他の共有者全員の同意を得なければならない範囲を明確にしました。すなわち、同条第1項の改正規定は、共有物の変更であっても、「その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」については共有者全員の同意によらず、持分価格の過半数により決定できることとされました。

そして、新たに所有者不明等共有土地を念頭に同条第2項の規定を設けて、「共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは」は、裁判所は、共有者の請求により、所在等不明共有者以外の共有者の同意を得て、共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができるようになりました。

また、共有物の管理に関する民法第252条について大幅な改正がなされました。第1項の改正により、持分価格の過半数により決定することのできる共有物の管理に関する事項に、共有物の管理者の選任及び解任が含まれることを明らかにしました。

さらに同項後段に、「共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。」との規定が加わりました。少し分かりにくい規定ですが、例えば共有物を単独で使用している場合に、その使用方法を変更するには、共有者全員の同意によるのではなく、各共有者の持分の価格の過半数で決めてよいということです。遺産分割前の共同相続財産をめぐる争いで、少数持分権者が単独で建物を占有している場合に、過半数持分権者が当該建物の明渡請求ができるかが問題となり、最高裁昭和41年5月19日判決は、「他の全ての相続人らがその共有持分を合計すると、その価格が共有物の価格の過半数をこえるからといって」「共有物を現に占有する前記少数持分権者に対し、当然にその明渡を請求することができるものではない。」と判断しました。しかし、この判決をどのように解釈するかについては意見が分かれていて、この判決は、直接的には、特段の定めがないまま共有者が共有物を使用している場合に、共有物の管理に関する事項を持分の価格の過半数で定めることの可否については判断していないとの立場がある一方、この判決は、特段の定めなく共有物を使用する者がいる場合には、その者の同意なく、共有物の使用者を定めることはできないことをも含んでいるという見解もありました。そこで、この点を明確にするために、このような場合も持分価格の過半数で決してよい、とされたものです。

もっとも、このようにした場合、現に共有物を利用している共有者は不利益を被ることになりますから、新設された同条改正第3項は、「共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者特別の影響を及ぼすときは、その承諾を得なければならない。」として救済を図っています。

新設された同条改正第2項は、裁判所が、持分価格の過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる場合を定めています。

さらに新設された同条改正第4項は、持分価格の過半数の決定より設定できる賃借権等について定めています。もっとも、土地や建物の賃借権については、借地借家法の適用のあるものはこの規定によって設定することはできません。  —続—

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