同一労働同一賃金!!⑰【夏期冬期休暇】に関する最高裁の判例が示されました

令和2年10月26日

 

【夏期冬期休暇】に関する最高裁の判例が示されました。

弁護士法人ACLOGOS

弁護士 竹 下  勇 夫

正社員は夏期及び冬期に有給でそれぞれ3日ずつの特別休暇を取得することができるのに対し,時給制契約社員にはこれらの休暇が付与されていないという待遇差について、日本郵便(佐賀)事件の原審である福岡高裁は、このような待遇差は不合理な相違といわざるを得ないと判断していましたが、同事件の最高裁判決は、高裁の判断を是認しました。次のように述べています。

 

上告人において、郵便の業務を担当する正社員に対して夏期冬期休暇が与えられているのは、年次有給休暇や病気休暇等とは別に、労働から離れる機会を与えることにより、心身の回復を図るという目的によるものであると解され、夏期冬期休暇の取得の可否や取得し得る日数は上記正社員の勤続期間の長さに応じて定まるものとはされていない。そして郵便の業務を担当する時給制契約社員は、契約期間が6か月以内とされるなど、繁忙期に限定された短期間の勤務ではなく、業務の繁閑に関わらない勤務が見込まれているのであって、夏期冬期休暇を与える趣旨は、上記時給制契約社員にも妥当するというべきである。

郵便の業務を担当する正社員と同業務を担当する時給制契約社員との間に労働契約法20条所定の職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があること等を考慮しても、両者の間に夏期冬期休暇に係る労働条件の相違があることは、不合理であると評価することができるものといえる。
したがって、郵便の業務を担当する正社員に対して夏期冬期休暇を与える一方で、郵便の業務を担当する時給制契約社員に対して夏期冬期休暇を与えないという労働条件の相違は、労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。

以上で、令和2年10月13日及び同月15日に言い渡された5件の最高裁判決の説明を終えるとともに、長期間にわたって連載してきた同一労働同一賃金に関するコラムを終了することとします。

                                 (終)