同一労働同一賃金!!⑭ 【年末年始勤務手当】に関する最高裁の判例が示されました。

令和2年10月21日

【年末年始勤務手当】に関する最高裁の判例が示されました。

弁護士法人ACLOGOS

弁護士 竹 下 勇 夫

日本郵便(大阪)事件最高裁判決によって、年末年始勤務手当に関する待遇差についての判断が示されました。

本件では、正社員に対し、勤務した1日につき、12月29日から同月31日までは4000円、1月1日から同月3日までは5000円の年末年始手当が支給されるが、契約社員に対しては、支給されていませんでした。

このような待遇差について、原審の大阪高裁判決は、年末年始勤務手当は、年末年始が最繁忙期になるという郵便事業の特殊性から、多くの労働者が休日として過ごしているはずの年末年始の時期に業務に従事しなければならない正社員の労苦に報いる趣旨で支給されるものと認められる、とし、しかしながら契約社員は、①短期雇用を前提とし、繁忙期である何末年始の就業を前提とされていること、②時給制契約社員の多くが短期で退職しているという実情があること、等を考慮して、不合理な待遇差とはいえない、但し、「契約社員にあっても、有期労働契約を反復して更新し、契約期間を通算した期間が長期間に及んだ場合には、年末年始勤務手当を支給する趣旨・目的との関係で本件比較対象正社員と本件契約社員との間に相違を設ける根拠は薄弱なものとならざるを得ないから、このような場合にも本件契約社員には本件比較対象正社員に対して支給される年末年始勤務手当を一切支給しないという労働条件の相違は、職務内容等の相違や導入時の経過、その他一審被告における上記事情などを十分に考慮したとしても、もはや労契法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。」として、契約期間を通算した期間が5年を超えている契約社員についてまで年末年始勤務手当について上記のような相違を設けることは、不合理というべきである、としました。

 これに対し、本件最高裁判決は、原審のような通算契約期間の長短による差異を認めず

年末年始勤務手当は、郵便の業務を担当する正社員の給与を構成する特殊勤務手当の一つであり、12月29日から翌年1月3日までの間において実際に勤務したときに支給されるものであることからすると、同業務についての最繁忙期であり、多くの労働者が休日として過ごしている上記の期間において、同業務に従事したことに対し、その勤務の特殊性から基本給に加えて支給される対価としての性質を有するものであるといえる。また、年末年始勤務手当は、正社員が従事した業務の内容やその難度等に関わらず、所定の期間において実際に勤務したこと自体を支給要件とするものであり、その支給金額も、実際に勤務した時期と時間に応じて一律である。

上記のような年末年始勤務手当の性質や支給要件及び支給金額に照らせば、これを支給することとした趣旨は、本件契約社員にも妥当するものである。として、一律にこのような待遇差は不合理であるとしました。

これはおそらく、原審が、短期雇用が前提の契約社員は、当初から繁忙期である年末年始に就労することを当然の前提として採用されている、という点を重視したのに反し、最高裁は、一般の人たちが休んでいるときに働いていることに対する対価だということを重視し、そうであれば更新を繰り返しているかどうかに関係なく一律に支給すべき、との判断に至ったものと思われます。

その他の特殊勤務手当の待遇差について判断する際にも参考になると思われます。

(続)