【連載コラム】同一労働同一賃金!!⓻

【連載コラム】同一労働同一賃金!!(7)

弁護士法人ACLOGOS

           弁護士 竹 下 勇 夫

 

次いで、「賞与」について説明いたします。

指針の内容を図解すれば上記のようになります。そして基本給のところで述べた指針の(注)の部分は賞与の場合にも当てはまります。

多くの企業においては、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との賞与の支給基準・ルールが異なっている場合が多いと思います。事業主においては、改めて就業規則や賞与規定の記載内容を確認し、支給基準・ルールの相違があるか否か、あるとすればその相違はいかなる理由により生じたものか、整理しておく必要があると存じます。

ここで、賞与に関する裁判例を確認しておきましょう。

 

東京高裁平成31220日(メトロコマース事件控訴審)判決

①一般に、賞与は、月例賃金とは別に支給される一時金であり、対象期間中の労務の対価の後払い、功労報償、生活補償、従業員の意欲向上など様々な趣旨を含み得るものであり、いかなる趣旨で賞与を支給するかは使用者の経営及び人事施策上の裁量判断による。

②このような賞与の性格を踏まえ、長期雇用を前提とする正社員に対し賞与の支給を手厚くすることにより有為な人材の獲得・定着を図るという人事施策上の目的にも一定の合理性が認められることは否定することができない。

③少なくとも正社員個人の業績(業績に対する貢献)を中心に反映させるものとは必ずしもいえず、主として対象期間中の労務の対価の後払いの性格や人事施策上の目的を踏まえた従業員の意欲向上策等の性格を帯びているとみるのが相当。

④従業員の年間賃金のうち賞与として支払う部分を設けるか、いかなる割合を賞与とするかは使用者にその経営判断に基づく一定の裁量が認められる。

⑤契約社員Bは、1年ごとに契約が更新される有期契約労働者であり、時間給を原則としていることからすれば、年間賃金のうちの賞与部分に大幅な労務の対価の後払いを予定すべきであるということはできないし、賞与は業績等を踏まえて労使の団体交渉により支給内容が決定されるものであり、支給可能な賃金総額の配分という制約もあること、当該企業においては、近年は多数の一般売店がコンビニ型売店に転換され、経費の削減が求められていることがうかがわれること、第1審原告らが比較対象とする正社員については、他の正社員と同一に遇されていることにも理由があることも考慮すれば、契約社員Bに対する賞与の支給額が正社員に対する上記平均支給実績と比較して相当低額に抑えられていることは否定することができないものの、その相違が直ちに不合理であると評価することはできない。

この判決は、賞与の性質、支給目的を重視して、契約社員との待遇差を不合理ではないと解しているように思われます。

 

                                   【同一労働同一賃金⑧へつづく】

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