【民事執行法】令和元年民事執行法改正(預金・給与情報の取得手続きの新設など)

改正の経緯

裁判所で作成された判決文や調停調書には「被告は原告に対して金〇円を支払え」など、当事者間の権利義務が記載されます。しかしながら、判決文等それだけでは手元にお金が入ってくるわけではありません。実際には、判決文に基づいて執行裁判所に強制執行の申し立てを行わなければなりません。

しかしながら、強制執行に際しては、債務者(借主)の財産の在りかは、〇〇銀行△△支店など、債権者(貸主)が特定したうえで裁判所に申し立てをしなければなりませんが、どこに財産があるのかは通常知ることが出来ません。

その結果として、強制執行逃れが横行している現状があることを受けて、強制執行の機能を強化するために行われたのが今回の民事執行法の改正です(2020年4月1日施行)。

法務省 パンフレット

改正の概要

本改正には大きく2つのポイントがあります。

① 財産開示手続きの見直し

  • 罰則の定め

これまで、債務者の財産を調査する手続きとしては、財産開示手続きがありました。これは、裁判所が債務者に財産目録の作成を命じたうえで裁判所に出頭させて所在を陳述させる手続きです。ただ、この財産開示手続きに出頭しない場合でも、「過料」といういわば罰金の様な制度があるだけでした。

財産開示手続きに出頭しないという人は、もともと、判決などで返済義務を負っているのにそれを無視している人ですから、そのような人に経済的・金銭的な圧力をかけてもあまり効果がないというのは理解できると思います。事実、財産開示手続きは弁護士へのアンケートでも債権を回収できなかったという回答が75%にも及ぶという報告もあります。

今回の法改正では、財産開示期日への不出頭や虚偽陳述に対して刑事罰(6か月以下の懲役または50万円以下の罰金)が科されることとなりました。刑事罰が定められたことで、これまでとは異なるプレッシャーがかかることにはなりましたが、刑事罰も結局のところしっかりと適用されなければ効果は薄いため、今後の実際の適用状況を注視していく必要があります。

  • 利用権者の拡大

また、これまでの財産開示手続きでは、養育費などでよく利用される公正証書に基づく債権を有する者が、申立権者から除外されており、その点でも使いにくい制度となっておりました。

この点、申立権者の限定が解除され、公正証書、仮執行宣言付判決等、支払督促、仮処分命令などでも申し立てが可能になりました。離婚に伴う給付(養育費)などでは公正証書は広く利用されており、制限が解除されたことは好ましいことだと考えます。

② 第三者からの情報取得手続きの新設

また、今回の法改正では、第三者からの情報取得手続きが新設されました。これは、例えば、預貯金などの所在を債務者に尋ねるのではなく、金融機関に対して直接照会できるという制度です。これまでは、確定判決など債務名義があれば、弁護士会を通じた照会(弁護士法23条の2)に基づく照会が行われておりました。

もっとも、弁護士会照会については、条文上被照会者の沖縄県内の金融機関はこの照会に応じておりましたが、一部メガバンクは個人情報保護などを根拠として、弁護士会との特別な協定締結を条件にとしてしか照会に応じない姿勢を示し、沖縄弁護士会を含む協定を未締結の会からは照会ができない金融機関もありました。

しかし、法改正によって、民事執行上に法的根拠が明記された手続きが整備されたことから、金融機関が裁判所からの照会申し出を拒絶することは困難になると考えられます。

また、今回の改正によって、法務局・市町村・日本年金機構から不動産・給与に関する情報も取得できることになり、この点も非常に大きな改正です。特に、給与の差押はこれまで探偵を雇って張り込みでもしなければ事実上困難でしたし、せっかく就業先を突き止めても、仕事を変えられてしまえば、容易に執行から逃れることが可能でした。

依頼者の最終的な獲得目標が債権の回収であり、せっかく勝訴したとしても執行制度が不十分であれば、全く意味がありませんので、利用者にとって使いやすく、実効性のある制度として運用されることを期待したいと思います。

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